エクストルージョンなしで歯肉縁形態を整えた症例
その歯が保存不可能で抜歯の適応症である場合、抜歯即時埋入が適応症となるケースが多数あります。ただし、抜歯予定の歯周囲の骨が広範囲に欠損している場合エクストルージョンして骨レベル、歯肉レベルを歯冠側に増量して抜歯後の歯肉レベルの歯根側移動を補正して抜歯即時埋入を行うことが推奨されています。その術式に対してなんら異論はありません。ただ、抜歯後の軟組織のの変化を的確に予想して、インプラントを適正な位置に埋入することでエクストルージョンを行うことなく抜歯即時埋入を行うことで著しく治療期間を短縮して審美的に歯頸を整えることが可能となります。
【1】 術前の状態。右上1の歯冠の色から失活歯であることがわかります。かなりの動揺が認められました | |
【2】術前のレントゲン像。周囲の骨が広範囲に吸収して保存不可能であることあがわかります。ただこのレントゲン像だけでエクストルージョンが必須であると判断するのは早合点と言えるでしょう。 | |
【3】術前のCT像。レントゲン像では予想できませんでしたが、思ったより口蓋側に骨が残存していることから、通常の抜歯即時埋入の適応症であることがわかります。 | |
【4】抜歯後の咬合面観 | |
【5】インプラントをCT像を参考にして、口蓋側に低位埋入します。 | |
【6】インプラント埋入後骨補填材を填入します。 | |
【7】スポンゼルで覆い縫合した状態。 | |
【8】埋入直後のCT像。理想的な位置にインプラントが埋入されました。このCT像から良好な予後が期待できます。抜歯した天然歯をプロビジョナル代わりに利用しました。そのことによりこのCT像からフックスチァーと最終補綴物の位置関係が確認できます。 | |
【9】埋入後2か月でアバットメントを装着します。ジンジバルロールテクニックを用いて頬側の歯肉のボリュームを増やします。 | |
【10】歯肉が治癒した状態。歯肉縁形態が自然と出来上がってきました。 | |
【11】術後約3ヶ月で最終補綴物が装着されました。頬側の歯肉のボリュームは不足していますが患者様は十分に満足しているということで結合組織移植は行っていません。ノンエクストルージョン、ノングラフトにより短期間に治療を終了することができました。歯肉の退縮も認められません。 | |
【12】埋入後7か月のCT像。インプラント周囲の頬側骨板は安定した状態を維持しています。 |