歯科専用CTによる被曝

福島第一原発事故の収束のメドが依然として立たないまま既に約4ヶ月が過ぎ、同原発の複数の原

子炉から飛散した放射性物質は同原発周辺のみならず関東南部地域まで拡がっている。

 

アメリカ、フランスの協力を得て、国や東電は連日必死の作業を続けているが、放射性物質を除去し

た後に逆浸透膜で海水中の塩分を取り除く”汚染水処理システム”の「循環注水冷却」も軌道に乗り

つつあり、一日も早く事故収束への足掛かりとして欲しいと願うこと大である。

 

ところで、4月に政府が提示した、学校における放射線の安全基準値20mSv(ミリシーベルト)/年につ

て、子供に対しては一般人の下限の年間1mSvを適用すべきだとこれに異を唱えた内閣官房参与の

辞任劇などもあったが、最終的には年間20mSvで落着くようだ。ただ、日本弁護士連合会や民間活

動団体 (NGO) などは見直しを求めていると報じられている。

 

5月2日の「首相官邸災害対策ページ」では、学校での放射線量基準について校庭・園庭での測定値

が1時間当たり3.8µSv(マイクロシーベルト:ミリシーベルトの1,000分の1)以上の場合、校庭での活

動を1日当たり1時間程度にするなど、児童生徒等の屋外活動をなるべく制限することが適当と述べ

ている。さらに、年間20mSvは1年間ずっと3.8µSvの値の中で毎日8時間を外で過ごし続けると仮定

した場合の数値であるから、1時間の場合はより安全性の厳格な方向になると付言している。

 

ちなみに、放射線障害防止法では放射線量が3ヶ月当り1.3mSvを越える場合はその区域を放射線

管理区域に設定しなければならないと定めており、時間当たり換算では0.6µSvである。即ち、

3.8µSv/hはその6倍の線量となり、当然管理区域に設定されるべき線量下で子供たちが遊ぶことに

なると批判が続出しているが、政府は上述の考え方を崩してはいない。。

 

ことほど左様に放射線被曝量が人体に及ぼす影響については、専門家の間でも結構幅を持った考え

方があることも事実なのである。

 

そもそも20mSv(ミリシーベルト)/年は、国際放射線防護委員会(ICRP)の緊急時被曝の中で事故収

束後の基準1~20mSv/年の範囲を考慮して定めた値であり、計画的避難区域の設定基準と同じで

ある。

 

3.8µSv/hは以下のようにして求められる。

    但し、

    1日のうち、8時間を屋外、16時間を屋内にいるものとする。屋内では、防災指針

    (原子力安全委員会)に示された「沈着した放射性物質のガンマ線による被曝の

    低減係数」の表から、「平屋あるいは2階建ての木造家屋」の低減係数0.4を適用

    する。

         XµSv/h×8h/d×365d/y+XµSv/h×0.4×16h/d×365d/y=20mSv/y

                    よって  X=3.8µSv/h

    このように、大気中放射線量が毎時3.8µSvで、毎日8時間屋外にいたと仮定すると、

    1年後の積算は20mSvとなる。

 

校庭の大気中放射線量が毎時3.8µSv以上の学校では屋外活動が制限されることになるが、年間

1mSvの基準を定めた場合も基準が厳しくなって、子供が屋外で遊べないなどの悪影響が出ることに

なりかねず、生活や教育の継続と被曝回避のバランスから政府は年間20mSvを選択したのだろう。

 

さて前置が長くなったが、此処で本題に入ろう。

病院などで受ける全身CTスキャンの放射線量はいろいろな数値が報じられているが、年齢、体格、

装置などの複合効果で凡そ1.2~6.9mSvと考えて間違いではないだろう。ちなみに或るデータでは

胃のx線検診の値として0.6mSvが報告されている。

 

当院で導入している歯科用CTはノーマルモード時40µSv、高画質モード時60µSvの低線量なので、

全身CTスキャンの放射線量(最大6.9mSv=6,900µSv)の1/100(100分の1)以下で済むスグレ物で

ある。また、胃のx線検診の値と比較しても、x線検診1回分の線量(0.6mSv=600µSv)は当院の歯

科用CT(60µSv)の10回分の線量と同じである。

 

このように、身体の健康を司る食物を噛み砕く歯の治療に不可欠なCT撮影は非常に低線量で済む

ので、ご心配なさらずにご來院下さるようご案内致します。 

                                                        院長  

        

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