今回は昨年の国際歯科大会で講演したさいに提示した症例報告をさせて頂きます。
国際歯科大会は4年に一度行われる約7000人の歯科医療従事者が集う歯科界では世界で一番大きなイベントです。
このような大きな学会で講演できたことを光栄に思っています。
その国際歯科大会で抜歯即時埋入vs抜歯待時埋入のインプラント治療に関するパートで講演させて頂きました。
右に行くと国際歯科大会の会場
左に行くと国際デンタルショーの会場です。
世界最大級デンタルショーで各社最新の商品が展示されていました。
国際歯科大会での講演のメインの症例をご紹介させて頂きます。
長期に口腔内を放置したため崩壊が著しいのがお分かり頂けると思います。
目黒駅の歯科医院に通院するには片道約2時間程かかりますが、当院でのインプラント治療を希望なさいました。
歯が溶けるように削れています。
1990年代にマッコイがコンプレっションシンドロームとという言葉で紹介した特異的な力がかかり歯に圧電流が発生して起こる現象です。
かみ合わせの力の歪がこの歯に集中したことが予想されます。当然その力の歪は体全身に波及してひどい腰痛持ちで1週間に2回は整骨院に通院しなければならない状態でした。
治療開始から3ヵ月半の短期間で補綴物が装着されました。上顎は天然歯をすべて抜歯して抜歯即時埋入を含めインプラントが7本埋入されました。下顎は両側第一大臼歯部に2本インプラントが埋入されています。
左右対称に歯肉の連続性が獲得され審美的にもある程度満足いく結果となりました。
骨伝導能を有するHAインプラントを用いることにより低侵襲で効率がいいインプラント治療が可能となります。
補綴物に沿って歯間乳頭が成長してきていることがお分かり頂けると思います。
講演時のスライドがスライドが白黒だったので再現してみました。
患者さんは73歳で平均寿命まであと10年です。83歳まで患者さんが生きたとすると治療に2年かけたら残りの人生の1/5を治療に費やすことになります。3か月半という短い期間で治療が終了したことは患者さんにとってとても有益なことなのです。
腰痛がなくなり、手足のしびれも軽減して、整骨院も全く行かなくなったそうです。「口は体の要なんですね。」とうれしい言葉を頂きました。去年は予定していた京都旅行を腰痛のため直前にキャンセルしたそうですが、今年は海外旅行への意欲を語っておられました。
インプラントを欠損補綴に使用して患者さんの顎位を立て直す。そして健康な顎口腔系の機能により患者さんは健康を取り戻す。そんなことをいとも簡単に魔法のようにできてしまうインプラントロジストになりたいと若き日に夢見てました。この患者さんを治療して少しその理想に近づけたような気がします。
術前のレントゲン写真
術後のレントゲン写真