左上3番、狭窄歯列弓治療例

エキスパンジョンドリルを用いて治療期間を短縮した狭窄歯列弓症例

他医院で矯正治療をおこない欠損部にインプラント治療を希望して来院なさいました。左上の犬歯ですが、骨幅がなく歯肉が陥没していることがわかります。モンゴロイドではよくあることですが、前歯部の骨幅は薄く難症例であることは一目瞭然です。いかに治療期間を短縮して、低浸襲で治療を進めていくかが大切でしょう。

術前の写真 【1】 仮歯が両隣在歯に接着された状態で来院なされました。犬歯の歯肉の陥没が認められ、GBRによる骨造成が必要であることが示唆されます。患者様は29歳、女性で審美的、機能的回復を希望しています。治療の結果のみならず、その過程でのQOLも十分に考慮した治療計画が望まれます。
術前の咬合面の写真 【2】 術前の咬合面観。両隣在歯間の距離は約7mmしかありません。インプラントと天然歯の近接限界が1.5mmですからナロータイプのインプラントを選択することが安全な方法といえます。頬舌的にも、近遠心的にもピンポイントの埋入となります。
歯肉弁を剥離した状態 【3】歯肉弁を剥離した状態。歯槽頂付近では骨幅が2mm程度しかなく、やはり難症例と言ってよさそうです。くれぐれもスプリットクレスト法を選択することは避けてください。悲惨な結果となるでしょう。
インプラント床を形成している写真 【4】エキスパンジョンドリルでインプラント床を形成していきます。舌側から形成することで最も力のかかる頬側ネック部をコーティカルボーンで支持することが可能となります。
インプラント埋入時の写真 【5】埋入方向の自由度がなく頬側が開窓しました。歯肉弁を大きく剥離して開窓部位を確認してインプラント床の方向を修正します。
インプラント床形成時の咬合面の写真 【6】インプラント床形成時の咬合面観。頬側の皮質骨は残存して口蓋側の裂開症例となります。
インプラント埋入時低位埋入した状態 【7】審美領域のインプラント埋入において口蓋側に低位埋入することは常識となってきました。この症例においては低位埋入することによって口蓋側の裂開量を減少させる目的も兼ねています。もちろん低位埋入することでHDDを減少させることも可能です。
HAメンブレンテクニックにより骨形成をした状態 【8】頬側、口蓋側をHAメンブレンテクニックにより骨造成していきます。この手法により安全に、確実に、治療期間を短縮したインプラント治療が可能となります。
縫合した状態 【9】縫合した状態。確実に創面を閉鎖します。
インプラント補綴を装着した状態 【10】インプラント補綴を装着した状態。埋入後約4ヶ月で治療が終了しました。陥没していた歯肉の回復が認められます。【1】と比較。2はオールセラミックスで歯冠修復しています。1,4も今後歯冠修復が必要となってきます。
術後6ヶ月のCT画像 【11】術後6ヶ月のCT像。インプラント周囲は骨様組織に覆われていて今後安定した予後が期待できます。

難症例でありますがインプラント埋入後、約4ヶ月で最終補綴物を装着することができました。モンゴロイドの審美領域は抜歯後急速に骨幅が減少していきます。成熟側の埋入となるとほとんどの場合狭窄歯列弓で難症例となりますが、早く、美しく自然に仕上げることはインプラントロジストとして当たり前のことと考えるべきでしょう。